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百舌谷さん逆上する

『百舌谷さん逆上する』

基本的にはツンデレを題材にしたコメディ漫画なんだけど、その言葉から想像できないほど物語の密度が高くてびっくりする。

『ヨーゼフ・ツンデレ型双極性パーソナリティ障害』と、この作品では『ツンデレ』をそう呼ぶ。
主人公の百舌谷さんが患っている『ツンデレ』は、近年乱造され氾濫する数多の平坦化されたデザインの萌えキャラクターとは異なって、『ツンデレ』それ自体にアイデンティティの葛藤を抱えているために単なる萌えに終始しないところが面白い。
特に『ツンデレ』を患うゆえに他人に無用の暴力を加えてしまうことが多々あって、それが本来望んでいる行為でなくともしてしまうという矛盾によって、ある種の社会不安・人間不信を抱えるというデリケートな部分にまで言及していくあたりがすごい。
そんな百舌谷さんの立場から出てくる言葉がまた大変インパクトがある。

以下抜粋
『一般によく誤解されている事ですが
私達ツンデレは他人に対する好意や愛情を
それとは裏返しの攻撃的な行動で表してしまうため
すべての感情が普通の人間とは逆であると思われがちです
しかしツンデレの症状が出て逆の愛情表現になるのは他人に対する好意だけで
喜怒哀楽の感情は他の普通の人間と何ら変わりなくあるんです
つまりツンデレだって怒る時にはちゃんと怒っているんです
皆さんにはわかりますか
自分が今真剣に怒って訴えたい事があるのに皆が皆半笑いで何もとりあってくれず
あまつさえ「萌え」などと愚劣な言葉で道化のようにはやし立てられ嘲笑われる私の気持ちが』


物語の導入から百舌谷さんの「自分がどういう人間なのかをはっきり自覚している」というこの発言は大変勇ましく痛快で、単純に萌えを期待する人間への皮肉にも感じられる。
序盤から緊張感あるエピソードが作品への期待をいやが応にも高めてくるけど、物語のテンションが下がることはほとんどない。
むしろ巻ごとに様々な揺れを見せつける展開に常に真新しさを感じさせてくれる。

それと上のほうで近年の萌えキャラに若干否定的な感じで言っちゃったけど、自分が『百舌谷さん逆上する』を更にすごいと思うのは、ライトオタクだろうが重度のオタだろうが(ともすれば一般的な人でも)すんなり受け入れられるのでは、という大衆性も持ち合わせている点だ。
作者独特のキャラクターのハッキリとした線からは物語を曖昧にはぐらかさない雄弁さがあって、それで以って扱っているのは『ツンデレ』という事情だけではなく、それを取り巻く人々の抱える葛藤でもあり、それは時に現実世界の自分たちが抱えている苦しみと連動させてくるから内輪受けに留まらない面白さがあるんだと思う。

ということで大絶賛。


その他
作者が昨年逝去された伊藤計劃氏の友人ということもあってか巻によってテーマの深刻さに驚いたり、本の裏表紙に書かれている作者のオススメ映画から遥か膨大な蘊蓄を溜めこんでおられるのだなあと感心したり、3巻のカラーページにてかつてない感動を覚えたり、10年ぶりくらいに『萌え』について真剣に考えさせられたりした。
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